
Chapter 01
鴨から蟹へ
2018年、横川の料理人が生み出したレシピ それを再現することから、この物語は始まった
秋の釜めしでは鴨を使った ならば冬も、と考えるのは自然な流れだった
しかし、計画は頓挫する 秋で鴨を使ってしまった以上、冬に同じ食材は使えない
豚のもつ煮 魚のタラ さまざまな候補が挙がっては消えた 見た目が茶色く、華やかさに欠ける 冬の釜めしにふさわしい主役が、見つからない
「赤い蟹の爪が一番映える これだ」
その瞬間、すべてがバチッと決まり始めた
業者が扱うのは、紅ズワイガニ一種類のみ 赤と白が映えるグラデーションも素晴らしい 選択肢がないからこそ、迷いもなかった
黒い陶器の釜に映える、鮮やかな紅色 蟹の爪だけでなく、ご飯にはほぐし身を贅沢に混ぜ込む 見た目にも、食感にも、蟹を存分に感じられる構成
偶然の制約が生んだ、運命的な主役の誕生だった
Beni-Zuwai Crab
Chapter 02
見えないところまで贅沢
蟹の爪の下に広がる、白く輝くご飯 一見すると、普通のご飯に見える
しかし、ひと口食べれば驚くはずだ
このご飯には、贅沢に蟹のほぐし身が混ぜ込まれている 横川の職人が特製蟹出汁で丁寧に煮出したほぐし身を、炊きたてのご飯に混ぜ込む
一粒ひと粒に蟹の旨みが染み込み、ご飯だけでも箸が止まらない美味しさ
「見えない部分にこそ、荻野屋の誇りを込めました 蟹の爪だけでなく、ご飯まで蟹づくし 最初から最後まで、カニを存分に楽しんでいただきたい」
── 開発担当者
見た目の華やかさだけでなく、隠れた部分にまで妥協しない職人魂 これが、2,500円という価格に込められた本当の価値である

Chapter 03
すべては蟹を引き立てるため
社長からの指示は、シンプルだった 「冬の鍋をイメージして作る」
鍋らしさを表現しつつ、荻野屋の釜めしらしさも残す
峠の釜めしの象徴である「あんず」は必須 その上で、カニと相性の良い食材を選ぶ
卵、長芋、白いきのこ カニの味を壊さない食材を、慎重に選定した
本来はシメジでも良かった しかし、「白い冬のイメージ」を大切にして、ブナピーを採用した
蟹に合う出汁のブレンド 蟹の味を壊さない食材選び 白い冬のイメージを表現する色合い 360度どこから見ても美しい盛り付け
二番出汁を使い、味を強く出しすぎないようバランスを取る 煮浸しの時間を短くして、しょっぱくならず、色も変わらないよう調整する
長芋の味付けは、横川の料理長に相談して決定した 試食した多くの人が評価した 「カニが美味しい、カニご飯が美味しい、その次に長芋が美味しい」
長芋が、ちょうどいい味付けで、ご飯が進むアクセントになっている
盛り付けについては、生け花をやっている上司の影響で、「360度どこから見ても美しい」という意識を常に持っている 生け花は本当に360度の美しさを追求するもの その考え方を、釜めしの盛り付けにも応用している
Chapter 04
豪華なのに軽やか
試作の回数は、数えきれない
1回目と2回目で、方針が異なる 2回目と3回目でも、また方針が異なる
過去に冬の釜めしで一度痛い目を見た経験がある その経験から、社長が「いいよ」と言った瞬間に、すぐ商品化を進める判断をするようにした
「社長から『全然ダメ』と言われたこともありました でも、今回は絶対に成功させたかった 社長が『いいよ』と言った瞬間に、すぐ商品化を進める判断をしました」
── 開発担当者
開発で最も苦労したのは、「見た目は豪華、でも食後は軽やか」という矛盾の実現だった
蟹の爪、10種の具材、たっぷりのご飯 見た目は確かに豪華だ
でも、食べ終わった後は、「あれ?もう終わっちゃった?」という軽やかな食後感
その秘密は、一つ一つの具材の繊細な味付けにある
すべてが計算され、調和された結果、「気づいたら食べ終わっている」という不思議な体験が生まれた
企画担当者が実際に食べた感想 「秋よりはるかに完成度が高く、釜めしとしてのまとまりがすごくある」「食べた後も普通の釜めしより重くない」「あれ?もう食べちゃった、という感覚があった」
これが、複数にわたる試作が生んだ答えだった
Kamamesshi Premium Kazusa
Chapter 05
家族の笑顔が、完成の証
開発担当には、4歳と3歳の子供がいる
試作品は必ず家に持ち帰り、家族で食べてみる 子供が気に入れば、そのまま採用する
そんな流れで、開発を進めてきた
「うちの子供たちが、この冬の釜めしを大好きで、よく食べてくれます 蟹の爪がちょうど手に取りやすく、子供でも食べやすいサイズ感 おもちゃのような見た目も楽しく、手も汚れないので喜んでいます」
── 開発担当者
家族で楽しんでもらえる商品にしたい
釜めし一個を一人で食べるのではなく、家族で分けながら、おせちの一品として楽しむイメージ
子供の笑顔が、何よりの答えだった

何回もの試作、140年の伝統、冬だけの贅沢
鴨から蟹へ 偶然の制約が生んだ、運命的な転換 すべてはカニを引き立てるために
試行錯誤の末にたどり着いた、カニを存分に楽しめる一品
家族で分け合いながら、おせちと一緒に楽しむ 子供も喜んで食べてくれる蟹の爪 ご飯が進む長芋 そして最後は雑炊風にして締めることもできる
冬の特別な時間に、ぜひ召し上がってください
峠の釜めしプレミアム「冬彩」 今しか味わえない、冬だけの贅沢

Supplement
開発の舞台裏
おすすめの香の物
わさび漬け:お茶漬けに最高の相性 梅干し:カニの旨みを引き立てる酸味 生姜:爽やかな香りが全体を引き締める 山ごぼう:荻野屋定番の付け合わせ
春夏秋冬の開発経緯
春:2018年レシピの完全再現(山菜) 夏:社長発信で初の川魚・鮎をメイン採用 秋:2018年レシピの完全再現(鴨、栗) 冬:試作10回、カニで完結(本商品)
価格設定への想い
「2500円は高いと感じています できれば1800円で多くの人に届けたかった でも、結果的に春や夏と同じくらい売れているので、社長の判断が正しかったのかもしれません」(開発担当者)