Chapter 01

横川に咲いていた、季節の釜めし

以前は、横川には季節の釜めしがあった。

春になると売り場に並ぶ、季節の商品。手がけていたのは、ある料理人だった。

彼のこだわりは、尋常ではなかった。
じゃがいもはピーラーを使わない。
玉ねぎは、周りの部分だけを使う。
生のこごみは長いのが売り物だが、見た目重視で良いところだけを使う。

季節の看板を任された職人。だからこそ、突き詰めることは当たり前だった。

峠の釜めしプレミアム 温春(いろは)

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「あのレシピを再現すれば、ゼロから始めるより早い」

ECサイトの立ち上げとともに、季節の釜めしプロジェクトが動き出す。企画から実現まで、わずか2ヶ月足らず。販売期間は短かったが、反響は数値に現れた。

需要は、確かにあった。


Chapter 02

復刻ではなく、再開発

その料理人は3年前に定年退職していた。残されているのは、わずかな記録だけ。

完全な再現は、不可能だった。

元々の春の釜めしには、ローストビーフがのっていた。しかし、電子レンジで温めると火が入りすぎてしまう。

菜の花を巻き込んだ卵焼きも、製造の難易度が高すぎた。

製造・盛り付けの工程

一つひとつ、手作業で仕上げる盛り付けの工程。360度どこから見ても美しい釜めしを目指す。

「冷蔵に対応できて、電子レンジで温めても美味しい。その条件を満たしながら、春らしさを表現する。復刻ではなく、現代に合わせた再開発でした」

── 開発担当者

制約の中から、新しい「いろは」が生まれていった。


Chapter 03

旬を届けるということ

食材は、刻一刻と変化する。

新玉ねぎ、新じゃがいも、生の椎茸。菜の花も、取れたての旬のものを使う。

「冷凍や冷蔵の食材を使えば、いつでも作れる。でも、あえて今の旬にこだわっている。新鮮な、今しか取れない食材を使うことに意味がある」

── 開発担当者

群馬と長野では、山菜の取れる時期が違う。群馬は4月になるともう遅い。でも諏訪なら、ゴールデンウィークまで取れる。

仕入先との連携を重ね、食材の入荷時期を見極める。ずっと調整を続けてきた。

だから、春にしか届けられない。


Chapter 04

見えないところに、職人の技

桜えびは、炊き込むとふやけてしまう。だから、混ぜ込む。

炊きたてのご飯に、桜えびを後から加える。風味も食感も、そのまま残る。冬の蟹ご飯と、同じ発想だった。

山菜の味付けには、オリジナルのつゆを使う。何度も試行錯誤して作り上げた、荻野屋だけの調味液。秘伝のレシピだ。

椎茸には飾り包丁を入れる。釜めしとは違う生の「どんこ」を使い、食感を変える。

桜えびの混ぜ込みご飯

具材の下に広がる、桜色のご飯。炊き込みではなく「混ぜ込み」にすることで、桜えびの風味と食感をそのままに。

「煮浸しと言われているものは、全部このオリジナルのつゆを使っています。秋も冬も、春も。荻野屋の味の根幹にあるものです」

── 開発担当者

見えない部分にこそ、荻野屋の誇りが詰まっている。

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